MRI精査及びESWT治療の有効性 | Nクリニック - 大阪府岸和田市 整形外科・スポーツ整形・リハビリテーション

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変形性膝関節症(膝OA)に対するMRI精査及び体外衝撃波(ESWT)の治療の有効性

(文献的考察)令和2年9月16日 院長 中里伸也

当院では、2年前に収束型の体外衝撃波(ESWT)を導入して以来「あらゆる疾患の痛みの改善」「骨癒合の促進」「組織修復の促進」への治療の一つとして、体外衝撃波を行ってきました。当初は、国際衝撃波学会で認められている疾患を中心にESWTを行ってきましたが、最近ではそれ以外の類似疾患に対しても行っています。変形性膝関節症に対するESWTもその一つです。ただやみくもに、それらの類似疾患に行ってきたわけではなく、根拠があったので進めてきたのです。

当院では、開院以来ずっと「変形性膝関節症の症例」に対して「明らかな手術適応で手術に至った症例」を除いて、ヒアルロン酸の関節内注射やリハビリテーションで対応してきましたが「レントゲン所見では手術をするほどではないのに疼痛がなかなか改善しない症例」を多く経験してきました。また「他院で同様の治療をしても症状が改善しなかった症例」或いは、手術をするほどではないのに疼痛が改善しない、という理由によって「他院で人工関節や骨切りなどの手術を告げられた症例」も多くあります。中には「ヒアルロン酸の注射で症状が落ち着いていたのに、あるとき急に痛みが出てきたという症例」もあります。

一方「レントゲン所見でかなりの変形(末期の変形性膝関節症)があるので、手術の絶対適応であるが、いろんな理由(高齢のため、内科的な合併症のため、家族の介護やペットの世話などで入院して家を離れられないため、近しい人の手術がうまくいかなかったため、など)で、どうしても手術を受けることができない症例」が多数いらっしゃることも事実です。それらの症例に対しては、最近ではMRI精査をするようにしています。

第一の目的は「病態の把握」ですが、第二の目的は「ESWTをすることになったら、その照射部位を特定する」ためです。最近特に「変形性膝関節症に対するMRI精査が疾患の病態把握に非常に有用である」といわれています。

膝のOAのMRIの評価は、whole-organ MRI score(WORMS)法が有効であり、
① 軟骨病変
② 骨髄異常陰影(bone marrow lesion :BML)
③ 軟骨下骨陥凹(subchondral bone attrition: SBA)
④ 骨髄腫
⑤ 骨棘
⑥ 半月板病変
⑦ 靱帯
⑧ 滑膜炎
これらを「8つの病変」としてとらえ、各病変の重症度を3~6段階で評価することで、膝OAの病態の半定量化を可能にしたものです。その中でも②のBML(骨髄病変)は、膝OAの初期から観察され、疼痛や病態進行との関連が示唆されている病変であるといわれており、私が着目した病変です。すでに、国際衝撃波学会で認められている疾患の中に「早期の骨壊死」というものがあります。骨壊死の症例をMRI精査してみると、骨壊死の周辺に多くの骨髄浮腫様の所見があることには気づいていましたが、当初はその正体が何であるかはわかりませんでした。ある時、「変形性膝関節症の痛みがなかなか治らない方」「腫脹がなかなか治まらない症例」のMRI画像の中には、この骨髄浮腫様の所見が高率であることに気づきました。のちにこれがBMLであることを知ったのは、赤木教授の論文を読んでからのことです。膝OAのMRI上のそれらのBMLの所見が「骨壊死を有した症例」の骨壊死周囲の骨髄浮腫様の所見に非常に似ていたので「早期の骨壊死にESWTが有効なら、ひょっとするとこの膝OAのBMLにもESWTが効果的であるのではないか?」と思い何人かの患者様にチャレンジングを行いました。そうすると、すべての人にではないですが、かなりの高率で患者様の膝の痛みの軽快と共に、ESWT開始3か月後には、MRI画像上のBMLが施術前に比べて明らかに縮小することを多く経験することができました。それが当院で膝のOAの患者様に衝撃波を始めたきっかけです。

それから実に多くの「膝のOAで痛みが続き、しかもMRI所見でBMLを有する」患者様にESWTを行ってきました。非常に効果があることを実感されていた患者様がほとんどです。ただ、そのように多くの患者様には非常に喜ばれている一方、効果が実感できない方もいれば「自費診療であるから」と言って、受けたくても受けられない患者様がいることも確かです。また、「どういった患者様には効果的で、どういった患者様には効果がないのか?その治療のタイミングはどうすればよいのか?その病態や作用機序はどうなっているのか?」など、まだまだ分からないことが多いのは確かです。そこで、最近BMLの存在を教えていただいた変形性膝関節症の大家である、近畿大学整形外科学教授の赤木將男先生にお会いする機会をいただき「BMLに対するESWTの効果」について相談させていただくと「まだそれらの効果についてはわからないことが多く、現状日本ではあまり知られていないが、可能性は十分あり得る」とのことでした。そして、今後は赤木先生と同大学講師である橋本和彦先生と共に、これらの体外衝撃波の膝関節症に対しての効果を実証するために、共同研究を進めていくことになりました。「体外衝撃波はBMLに対して果たして有効なのか?どういった機序でどういった症例に有効なのか?そのタイミングはどうであるのか?」をテーマに研究を進めてまいります。

ある時、橋本先生から海外の文献を一件紹介されました。「BMLは膝の痛みと関係しており、ESWTにより早くBMLの縮小と痛みの改善が認められた」という文献でした。それは2015年に発表されたものです。Fuqiang Gaoらによると「ESWTは膝の痛みの改善や痛みと関与するMRIでのBMLの縮小を非常に早く改善させ、機能的にも改善させる」と結論しています。そして「効果的で信頼ができ非侵襲的な技術で膝のOAを急速に改善させる治療法だ」とも言っています。つまり「ESWTは膝のOAの痛みの原因の一つであるBMLを速く改善させる機器である」ということを、海外の論文の中で見つけることができ、その時「この治療はきっと将来広まっていくべきで、多くの膝の痛みで困る患者様を救う治療になりえる」という予想が確信に変わりました。

ところが、前述したようにまだ日本ではそれらの研究や発表は皆無です。今後いろんな施設で注目される研究だと思われます。そして、本当に良い治療であれば必ずや多くの治療家に広まり、いずれ保険診療として認められるとも思っています。

先日、赤木教授や橋本講師との話の中で、変形性膝関節症の病態に骨粗鬆症が関与していることも教えていただきました。特に「骨粗鬆症がある人が無理に動きすぎて微細な骨折がおこりBMLが発生するのでは?」とのお話も受けました。実際、膝の痛みであるにも関わらず、骨粗鬆症の治療薬が奏功してくることを実証している文献も多数あります。また、福岡大学の山本卓明教授によれば「大腿骨内果無腐性骨壊死は本当の骨壊死ではない」と言っており「骨の中で微細な骨折が起こっており、骨壊死というよりも『圧排骨折』だ」とも話しています。それらの論文をみると、今後は変形性膝関節症の病態のとらえ方や治療方針が大きく変わってくる可能性を感じました。

私は、より多くの「変形性膝関節症の痛みでお困りの患者様」の生活の質が改善されることを切に願っております。他院でなかなか治らない膝の痛みでお困りの方がいらっしゃれば、ぜひ当院に来て、まずはMRI精査を受けていただきたく思います。また希望する方には骨量測定もさせていただきます。そしてESWTを一度受けてみてください。お待ちしています。

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