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院長の印象(第3弾:令和1年10月)
1年間の使用経験を踏まえて
9月中旬に大阪で衝撃波セミナーがあり、教育研修講演の演者として発表しましたので、その報告をさせていただきます。こういった機会を与えていただきました座長の熊井司先生や日本メディカルネクストの方々には感謝申し上げます。
今回のタイトルはスポーツ傷害に対するShock Waveによる画像変化というもので、昨年8月に当院で収束型の衝撃波を導入して以来の治療の結果をまとめて発表することにしました。特に、疼痛の改善ではなく、画像上の変化があった症例を選んで発表させていただきました。
発表した内容を報告させていただきます。治療を検討されている患者様や、衝撃波の導入を検討している先生方の参考になればと思っています。
当院での現在の適応疾患(国際衝撃波学会適応に準じて)は下記のとおりです。
- 慢性疾患:変形性膝関節症の関節外の痛み 骨壊死
- 離断性骨軟骨炎(初期から進行期:非分離型)
- 疲労骨折や骨折偽関節 骨端症
- 肘内側側副靭帯損傷 腱板部分損傷
- 関節炎やヘバーデン結節、ばね指、あらゆる石灰化
- 急性疾患:肉離れ 筋腱損傷
- 靭帯損傷(急性及び陳旧性)
- 新鮮骨折で早期復帰を希望するとき
- その他 術創部や術後癒着部位の修繕効果?
- 拡張型SW的な利用:画像に見えない損傷部分の疼痛改善や癒着剥離効果(特に低出力で利用)
当院で行ってきた症例(骨性組織)(H31.8-R1.8)
- 肘(上腕骨小頭)OCD(15例 15肘 12-17歳 avg.13.8)
- 膝(大腿骨内顆外顆)OCD(16例 17膝 7-16歳 avg.10.7)
- 足関節(距骨滑車)OCD(4例 5足 11-22歳 avg.16.2)
- 疲労骨折(脛骨、腓骨、踵骨、距骨立方骨、有鉤骨、舟状骨、肘頭、坐骨、尺骨、第5中足骨 足関節内顆)
(25例 12-43歳 avg.17.5歳)
- 骨壊死(9例 41-79歳 avg.68.5歳)
- 新鮮骨折(橈骨遠位端、指節骨)
- 骨挫傷
- 陳旧性剥離骨折(腓骨遠位端 尺骨遠位端)
- 骨折偽関節・変形治癒骨折
- 骨折術後
- 二分膝蓋骨・二分種子骨
- 二分膝蓋骨・二分種子骨
- 骨端症(シーバー病 オスグッド病)骨端線離開 骨端線損傷
- 骨盤裂離骨折(上下前腸骨棘)
- 石灰化(腱板、手など)
当院で行ってきた症例(疼痛緩和、軟部組織)
- 足底筋膜炎
- 肘関節症(上腕骨外側上顆炎 内側上顆炎、後方インピンジメント)
- 足関節症、リスフラン関節症、距骨下関節症
- 股関節症、膝関節症(半月板損傷、鷲足炎)
- CM関節症 へバーデン結節、ばね指 腱鞘炎 TFCC損傷
- 打撲傷 打撲血腫、肉離れ、筋腱損傷
- 膝蓋靭帯炎、アキレス腱炎
- リスフラン靭帯損傷 足関節外側靭帯損傷
- 腱板損傷 肘内側側副靭帯損傷 肩鎖関節内症
- 肩関節唇損傷 股関節唇損傷
- 他、筋膜間リリースや腱付着部の徒手で取りにくい癒着に対しても
これらの疾患はすべて当院での体外衝撃波の適応になっています。
治療の組み合わせ
- SW(Shock Wave)の前後に
- 骨性疾患にはLIPUS(Low intensity Pulsed Ultrasound低出力超音波パルス:超音波骨折治療器:セーフス、オステオトロン、アクセラス):新鮮骨折に対しての治療期間の短縮だけでなく遷延治癒骨折や偽関節に対しての骨癒合促進効果や離断性骨軟骨炎の修復促進効果
- 軟部組織疾患にはマイクロカレント(微弱電流:MC):アキュスコープやエレサス(サンメディカル社):マイクロカレント(MC)には傷ついた組織の修復をしたり、細胞の活性化させる役割:ミクロの傷を作るSWとは好相性(特に軟部組織修復や骨膜から血流の供給を受けている部分)
- NBAやMLBではSWとアキュスコープの組み合わせがGood!
PRP療法を組み合わせる時
PRP療法とは、Platelet Rich Plasma(自己多血小板血漿)療法のことで、当院では変形性膝関節症に対してAPS(第2種)、軟部組織損傷や膝以外の関節に対してはGPS(第3種)を行っているが、
変形性膝関節症:SW→APS→MC 定期的にSWやMC
肘靭帯損傷や腱板損傷などの軟部組織損傷:SW→GPS→MC
その後、定期的にSWやMC
当院がOCD(離断性骨軟骨炎)に対して行った症例
- 肘(上腕骨小頭)OCD(15例 15肘 12-17歳 avg.13.8)
- 膝(大腿骨内顆外顆)OCD(16例 17膝 7-16歳 avg.10.7)
- 足関節(距骨滑車)OCD(4例 5足 11-22歳 avg.16.2)
(いずれの部位も遊離期(不安定性の強い症例)は手術適応としてSWは行わなかった)多少の不安定があっても骨端線閉鎖前で、CT上画像変化が認められる症例はSWを続けた。逆にスポーツ禁止していてもCT画像上の変化がない不安定性のある症例は、手術を勧めた
- 肘OCD病期分類において透亮期及び分離期前期までが保存的療法の適応
- 骨端線閉鎖以前が保存的療法の良い適応
- 骨軟骨片の安定性の有無で適応を考慮
- 遊離期は適応外とし当初から手術を薦めた
肘OCD(15例)の結果
- 透亮期2例 分離期13例 遊離期 0例
- SW平均7.0回(3-13回)
- 期間 4.3か月(1-11か月)
- 治療評価基準(Hughston)を用いた
- Excellent3例 Good7例 Fair5例
- 分離期後期でも修復が得られた。また成長期が過ぎても修復が得られた
OCDのSWの結果
- 肘Excellent3例 Good7例 Fair5例(修復困難33%)
- 膝Excellent3例 Good8膝 Fair6例(修復困難35%)
- 足Excellent1例 Good1例 Fair2例(修復困難50%)
- 修復困難と判断したFairの症例でも、OCDの大きさは縮小しており、手術の適応になった症例でも骨軟骨移植の大きさを少なくすることができたと実感している
OCDに対するSWの効果(院長の印象)
- 肘OCDは症例を選べば比較的成績が良い
- 膝OCDは荷重関節なので肘に比べて成績が悪い
- 足関節OCDは成績が悪い
- 骨端線閉鎖前は保存的療法が原則であるが、たとえ不安定性の強い症例でも、保存的療法の期間にスポーツ活動を禁止してSWをすれば、安定化してくることがある
- 骨端線閉鎖後の多少の不安定性のある症例もSWにより修復が得られた症例があった
- SWは保存的療法というより手術のドリリングの結果に近い印象を受けた
- 手術を検討する前にやってみる十分な価値がある
画像変化の症例報告をしました。
肘(上腕骨小頭)、足関節(距骨滑車)、膝(内顆・外顆)骨壊死 疲労骨折(有鉤骨、脛骨、尺骨、第5中足骨)を合計19症例まとめて出しました。
レントゲン変化、CT変化、MRI変化など1症例に対して、SW前後や2か月ごとのCT変化、3か月ごとのMRI変化など最低4枚の画像、合計で数百枚の画像から選んだ2百枚程度の画像をお見せすることができました。かなり多くの画像量になるのでホームページ上ではアップできませんが、機会があればお見せしたいと思います。
発表前の2週間は診療の合間や、家に持ち込んでかなり多くの時間を費やして発表原稿と発表スライドを作成しました。放射線技師の尾上君や、衝撃波のデータ処理をお手伝いしてくれた、診療助手の小柳さんには感謝します。今は無事終了してほっとしています。
多くのスポーツ選手の為にこれからも精進していきます。
当院にある体外衝撃波は収束型の体外衝撃波です。拡張型の体外衝撃波とは治療効果など全く違いますので是非お間違えの無いように注意してください。
詳しくは院長に相談してください。
Nクリニック院長 中里伸也
