野球肩とは
野球肩とは、投球動作に関連して肩の痛みを発症するスポーツ障害の1つです。
インピジメント症候群、腱板損傷、リトルリーグショルダー(上腕骨骨端線障害)、ルーズショルダー(動揺肩)、肩甲上神経損傷などの疾患を原因とします。
野球肩の種類と原因
投球動作の繰り返し、正しくないフォーム、肩・肩甲骨まわりの筋力不足、体幹・股関節の柔軟性の不足など、さまざまな要因が影響し、以下のような疾患を発症します。
インピンジメント種症候群
野球肩の原因疾患としてもっともよく見られます。
肩を使う(投球動作をする)たびに、肩峰や靱帯に上腕骨頭が接触し、肩峰下滑液包が炎症を起こします。
肩を上げるときの痛みや引っかかりなどが見られます。
腱板損傷
棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋という4つの筋肉の腱の複合体である「腱板」を損傷した状態です。
投球動作の繰り返し、転倒などで肩を強くぶつけることなどで発症します。
痛みで腕が上がらない、腕を下ろすときの痛みなどの症状が見られます。
リトルリーグショルダー
(上腕骨骨端線離開)
リトルリーグ、つまり少年野球で見られる障害です。未熟な成長軟骨が繰り返しの投球動作などによって損傷した状態です。
投球時や投球後の肩の痛み、肩を回したときの痛みなどが見られます。
ルーズショルダー
(動揺肩、動揺性肩関節症)
肩関節を安定させるための上腕骨と肩甲骨の間にある靭帯・関節包が先天的に緩く、ここに肩の酷使が加わることで、周囲の組織が傷つけられます。
野球以外の、バレーボール、テニス、やり投げといった競技でも発症することがあります。
肩の動作時の痛みとともに、肩の不安定感・脱力感が見られます。
肩甲上神経損傷
(けんこうじょうしんけいそんしょう)
棘下筋をコントロールする肩甲上神経が、投球動作によって引っ張られる・圧迫されることで損傷した状態です。
野球だけでなく、バレーボール、テニス、やり投げといった競技でも起こり得ます。
肩の後ろの外側に痛みが出ることが多くなります。また、肩甲骨の山の外見が目立つようになったり、肩の疲労感を伴ったりすることもあります。
野球肩の症状
肩の痛み、肩の可動域の制限が主な症状となります。
多くは、安静時には痛みが見られませんが、練習の翌日に痛みが出ることもあります。また、投球しているうちに痛みが和らぐために投球を続けてしまう、というケースもありますので、注意が必要です。
- 投球時、投球直後の肩の痛み
- 練習が終わってからの肩の痛み
- 投球した翌日の肩の痛み
- 肩を上げられない、回せない
- 肩を動かしたときの引っかかる感じ
- 肩の不安定感、脱力感、疲労感
- 投球開始直後は痛いが、投げ続けると和らぐ
野球肩の診断と検査
問診、触診の上、超音波検査、MRI検査などによって損傷部位を特定し、診断します。
野球肩の治療
保存療法
数週間から数カ月の投球中止によって痛みが軽減されることが多くなります。投球を中止している間も、フォームチェック・改善を行い、再発防止に努めます。
リハビリテーション
超音波、低周波、低出力レーザー、アイシング、ホットパックなどによる物理療法、ストレッチ、筋力トレーニングなどを行います。
注射
インピンジメント症候群の場合には、肩へのヒアルロン酸ナトリウムの注射、ステロイド注射が有効になることがあります。
手術療法
保存療法で十分な効果が得られない場合には、手術を検討することがあります。
関節鏡視下での「デブリードマン」、肩峰の骨切除を行う「除圧術」などがあります。
なお手術が必要になった場合には、速やかに提携する病院をご紹介いたします。
野球肩の予防は?
野球肩の予防、再発予防のためには、以下のようなことが大切です。
フォームの改善や筋力トレーニングは、誤った方法で行うと十分な効果が得られない・逆効果になることがあります。できる限り、専門家の指導のもと、取り組むことをおすすめします。
- 正しいフォームを身につける
- 筋力トレーニングやストレッチで、筋力不足、柔軟性の不足を改善する
- 投球時、肩甲骨からの始動を意識する
- 球数制限を設ける、登板間隔をあける