体外衝撃波とは
衝撃波とは、音速以上の速さで伝わる圧力波のことを指します。
体外衝撃波治療は、この衝撃波を患部に照射する治療です。痛みを感じる神経を変性させたり、新生血管の再生を促進することで、治りづらい痛みを改善します。
現在、国内では足底腱膜炎に対してのみ、保険が適用されます。しかし海外では、腱板炎や偽関節、腱付着部炎などの疼痛の改善、難治性潰瘍の治療、勃起不全の改善など、さまざまな領域において応用されています。
体外衝撃波治療の主なメリット
体外衝撃波治療には下記のようなメリットがあります。
- 痛みを軽減(痛み刺激因子を減少)
- 炎症を軽減(抗炎症作用)
- 血流改善(現存する血流を改善・新たな血管増生)
- 成長因子を刺激
- 修復のための線維芽細胞を刺激
- 幹細胞増生を刺激
- 傷の修復能力を改善
ターゲットとなる組織
体外衝撃波治療は、主に以下の組織をターゲットとし、治療を行います。
- 筋肉
- 靭帯
- 腱
- 軟骨
- 骨
- 石灰化組織
2つの体外衝撃波
軟部組織には「拡散型圧力波」、硬部組織には「集束型衝撃波」を照射します。
「拡散型圧力波」は、主に筋損傷(肉離れや筋肉疲労や筋挫傷や打撲血種)、関節拘縮(筋メインの拘縮)に使用します。
それ以外の腱損傷や腱付着部炎、腱膜や筋膜のリリース、あるいは筋腱付着部の癒着が拘縮の原因と思われるとき、骨や軟骨性組織(半月板やTFCC、肩鎖関節などの関節円板)には「集束型衝撃波」を使用します。
腰痛症や投球障害肩など症候群的な疾患には、「拡散型圧力波」と「集束型衝撃波」を組み合わせた治療が効果的です。
対象となる疾患
現在、体外衝撃波治療が保険適用となるのは、6カ月以上が経過した「足底腱膜炎」に対する治療に限られます。
一方で国際衝撃波学会では、次の疾患が対象とされています。
- 足底腱膜炎
- アキレス腱炎
- アキレス腱付着部炎
- 膝蓋腱炎
- 上腕骨外側上顆炎
- 内側上顆炎
- 石灰沈着性腱板炎
- 骨折の偽関節
- 疲労骨折
- 早期の離断性骨軟骨炎
- 早期の骨壊死
- 舟状骨骨折
例外的疾患にも体外衝撃波の対応が可能です
本町Nクリニックでは、上記の疾患以外に、ISMSTに基づいた診療を行っております。
そのため、他のクリニックでは適応が難しい下記の疾患についても対応しておりますので、是非一度ご相談ください。
変形性膝関節症に伴うBone Marrow Lesion(骨髄異常病変)
- 膝関節
- 股関節
- 足関節
- 足部
- 肘関節
- 肩関節
- 手関節
- 手部
- 肩鎖関節
指の関節症
- 母指CM関節症
- へバーデン結節
- ブシャール結節
骨壊死
- 大腿骨頭壊死
- 膝関節
- 肩関節
- 月状骨(キーンベック)
- 手根骨
- 足根骨
離断性骨軟骨炎
- 肘(上腕骨小頭)
- 膝(大腿骨内・外顆)
- 足関節(距骨滑車)
骨端症
- オスグッド病
- シーバー病
- フライバーグ病
- ラルセン病
二分種子骨
- 二分膝蓋骨
- 外脛骨障害
- 有痛性三角骨
疲労骨折
- 腰椎分離症
- 骨盤(上・下前腸骨棘 恥骨 坐骨)
- 仙骨
- 尾骨
- 有鉤骨鉤
- 舟状骨骨折
- 種子骨
- 中足骨
- 肘頭
- 脛骨
半月板損傷
- TFCC損傷
関節唇損傷
- 肩
- 股関節
腱板部分損傷
- 腱鞘炎
アキレス腱部分損傷
- アキレス腱炎
骨挫傷
- 骨折の早期復帰
- 骨折偽関節
- 遅延治癒骨折
- 剥離骨折(陣旧姓)
靭帯損傷
- 肘内側靭帯
- 膝
- 足関節
- 指側副靭帯 etc
野球肘
- 上腕骨内側上顆
- 骨端核障害
- 肘頭骨端症
- 後方インピンジメント
石灰化
- 腱板
- 肘
- 手 etc
腱鞘炎
- ばね指
- ドゥケルバン etc
変形性膝関節症に対する体外衝撃波治療
変形性膝関節症に対して体外衝撃波治療を行った症例において、痛みなどの症状および骨髄浮腫・骨壊死の改善が見られることがあります。
MRI検査において骨髄浮腫や骨壊死様所見が認められる場合には、体外衝撃波治療を選択肢の1つとして検討されることをおすすめします。
体外衝撃波の効果
体外衝撃波治療における効果は、大きく2つ、挙げられます。
短期的な除痛効果
自由神経終末を破壊・減少させること、痛みに関わる神経伝達物質を減少させることで、短期的な除痛効果が期待できます。
長期的な除痛・組織修復作用
血管新生の再生やコラーゲン産生の促進により、組織の修復が期待できます。
また、炎症の原因となるサイトカインを抑制することで、炎症の改善が期待できます。
その他体外衝撃波治療に期待できる効果
- 抗炎症
- 血流改善
- コラーゲン刺激
- 成長因子刺激
- 幹細胞刺激
治療の流れ
約15分の照射を、2~3週間ごとに計2~3回、照射します。これ以降も、改善が期待できる場合には、患者様のご同意を得た上で治療を継続します。
注意
体外衝撃波治療は、完全な除痛や骨形成(治癒)を保証するものではありません。
また患者様、疾患によっては、治療効果や治癒期間が異なります。平均治癒効果は、60~80%と報告されています。
体外衝撃波治療の副作用やリスク
体外衝撃波治療は、非常に副作用の少ない治療です。これまでに、以下のような副作用が報告されています。
- 照射部位の発赤、出血斑、腫れ
- 治療中や治療後の疼痛、感覚異常、違和感
いずれも、一時的な副作用です。アメリカの治験データでは、痣形成、血腫、点状出血、瘢痕形成といった重篤な副作用はありませんでした。
費用
疾患 | 費用 |
---|---|
足底腱膜炎(1シリーズ) | 5,000点(50,000円の保険適応)3割負担で16,500円 |
それ以外の疾患 | 一般:初回10,000円 学生まで:初回5,000円 |
※当院では、体外衝撃波を予約診療料で行っております。
治療予約
難治性足底筋膜炎で体外衝撃波を行う場合、保険診療時間内に予約を取ります。
それ以外の疾患についても、当院では予約診療料を採用しておりますので、保険診療時間内で行うことが可能です。
予約方法について、電話または来院された際にご予約をお取りください。
※WEB予約からはご予約いただくことはできません。
自費診療の治療効果について
ご存じのように当院では保険適応外の治療として、体外衝撃波治療やPRP療法やAPS療法やMSC療法を行っております。特に体外衝撃波治療は今までの物理療法とは違って本当に効果的な治療だと思います。我々は世界基準で発表された適応疾患をもとに、それらの効果をじっくり時間をかけて実証してきた疾患を中心に適応疾患としています。またそれらの結果の一部を日本や海外の学会で発表したり国際ジャーナルに論文を投稿したりして認められています。世界的にはかなり広まっている治療で、当院が治療を始めたころから日本でも徐々に広まりつつある治療機器になっています。
ところが、我々はそのようにエビデンスや実績があるものを中心に治療を進めてはいますが、治療効果については決して100%改善するといった治療ではございません。説明では体外衝撃波治療は60%-80%の有効率とお話ししていますが、疾患や重症度或いは患者様自身の治癒能力によっても異なってきます。(もちろん保険適応の治療もそうですが。)
我々は治療に関しては保険適応の治療であるリハビリや投薬を主になっていますが、それでも改善しない場合はそれらの保険適応外の治療を勧めることがありますが、決して強制ではございません。あくまで任意の治療です。それらの治療を受けるかどうかは患者様自身が決めてください。
また治療効果に関しては、同じ疾患であっても、個人によっても違うし(治癒能力の違いなど)、その疾患の重症度や照射までの罹病期間(発症してから治療に取りかかるまでの期間)や照射回数や照射レベル、照射後の使用頻度によって当然治療効果は異なってきます。また、治療には照射する側の技術が必要な治療でもあり施術者の技術の違いによっても治療効果が異なることもあります。我々は 運動器体外衝撃波治療の認定を受けたスタッフのみが照射するようにしていますが、その中でも治療効果が低い疾患に関しては治療技術により治療効果が異なってくる場合もあります。
治療しても思うような効果の改善が得られない場合は、是非ドクターにお気軽にご相談ください。なんとか痛みをとって、修復を進めるように工夫して行きたいと思います。一方で、これは保存的療法では厳しいと思われたら手術を勧めることもありますが、その時はどうぞご容赦してください。どうぞご了承お願い申し上げます。